アメリカで生活していると、節々にキリスト教の影響を感じます。知れば知るほど興味深く、面白いなと感じています。
渡米予定の有無に関わらず、知っているだけでアメリカのニュースや文化、英語などに対する見方が変わってくるかも知れません。
そういった観点から私がロサンゼルスで生活しているときにふと気づいた点をまとめてみました。
CONTENTS
アメリカ建国前の民族の変遷
一番最初に北アメリカ大陸に住んでいたのは氷期頃に移住したアジア系の(!)インディアンなんだそうです。その後、下記のように移民が増え、現在のアメリカの土台が出来上がりました。
Key word | 出来事 | |
---|---|---|
氷期 3~1万年前頃 |
モンゴロイド | アジア系のモンゴロイドが凍結したベーリング海などを渡り、シベリアからアラスカを経由し南北アメリカ大陸各地に分散 |
15c後半 | 大航海時代 | ヨーロッパ諸国の探検家が航路を開拓し、次々と新しい土地とヨーロッパとを結ぶ |
1492年 | コロンブス | ヨーロッパ諸国にとっての新世界(アメリカ大陸)を発見 |
16c〜 | カトリック | ・ヨーロッパ諸国が北アメリカ大陸を植民地化するのと同時に多くのカトリック系が北アメリカ大陸に移住 ・カトリックに対立する新しい宗派「プロテスタント」が現れる |
1620年 | プロテスタント | 宗教的な自由を求め、メイフラワー号に乗りイングランドから北アメリカ大陸へ大勢のプロテスタントが移住 |
その後 | プロテスタント | 先住のインディアンやカトリックと対立しながらもプロテスタントが勢力を増し繁栄 |
出典: Wikipedia「アメリカ合衆国の歴史」 |
TOEFLのリーディングにも過去にそんなような問題があったような。
上記の通り、1776年にアメリカが国になるまでに、すでにたくさんのクリスチャンがそこで生活をしていました。
なので、仮にキリスト教がアメリカ建国のベースになっていたとしても不思議はありませんね。
アメリカの推定キリスト教人口
私が調べた限りでの情報ですが、日本との比較も含めてアメリカのキリスト教の人口を表にしてみました。
総人口 | キリスト教 人口 |
総人口に占める キリスト教人口の割合 |
|
---|---|---|---|
アメリカ | 約3.3億人a | 約2.4億人b | 約72.7% |
日本 | 約1.3億人c | 約95万4千人d (0.0095億人) |
約0.7% |
出典 a: U.S. Census Bureau Economic Census, QuickFacts July 2019 b: Wikipedia「Christianity in the United States」 c: 総務省統計局ホームページ 2020年6月概算値 d: 政府統計の総合窓口(e-Stat) 2019年度宗教統計調査 |
上記のように、アメリカでは総人口の約73%が自分はクリスチャンだと認識しています。道理でこんなにもよくクリスチャンに出会う訳です。(ですが、年々、クリスチャンの割合は少しずつ減ってきており、他の宗教や無宗教の人、無神論者などの割合が少しずつ増えてきているようです。)
日本にいた時は「宗教」と聞くとアレルギー反応というか、「遠慮しておきます」と思っていた私。ですがアメリカにいるとあまりにもたくさんクリスチャンと出会う機会があり、日本で感じていた「勧誘される!!」という雰囲気が全く感じられないこともあって、今ではクリスチャンのアメリカ人の友人に聖書の内容を教えてもらうまでになりました。
人生哲学と英語を同時に勉強できて、とても有意義な時間です。
アメリカの大統領とキリスト教
人口の約73%がキリスト教を信じているので、アメリカの大統領選はいかにクリスチャンの支持を集められるかが鍵だと言っても過言ではありません。
また、歴代の米大統領のほとんどがクリスチャンです(出典: Wikipedia 「Religious affiliations of presidents of the United States」)。
アメリカでは新しい大統領が決まると、1月の就任式で聖書 ( Bible ) に手を置いて宣誓します。就任式や演説の機会などには必ずと言って良いほど "God bless America!" ( アメリカに神のご加護がありますように!) と言って締め括ります。
今回のコロナ禍でもトランプ大統領が "God bless America." と言っているのをテレビやSNSでよく聞きます。
2020年6月、トランプ大統領が教会の前で聖書を手に報道陣に少し喋ったこちらのシーンは、アメリカでは物議を醸しました。
ですが、日本人の私としては一国の大統領が宗教を前面に出していることがとても新鮮でした。安倍首相が聖書などを手に報道陣に語りかける姿・・・想像できないですよね。日本は政教分離がきっちりしてますもんね。
アメリカのお札と標語
賛否両論あるようなんですが、なんとアメリカのお札の裏には、"IN GOD WE TRUST" ( 我々は神を信じる ) と表記されているのです!(出典: Wikipedia「In God We Trust」 )
また、この " IN GOD WE TRUST " はアメリカの公式な国家の標語なんです!( 但し強制的に神様を信じる義務はなく、あくまでも信教の自由は憲法で保証されています。 )
さらに!左に描かれている未完成のピラミッドの上にある目は「プロビデンスの目」。キリスト教の「神の全能の目」を意味し、"ANNUIT COEPTIS" はラテン語で「神は我々の企てを支持される」という意味なんだそうです (出典: Wikipedia「プロビデンスの目」)。
なぜ幽霊ではなくゾンビ映画なのか
アメリカの映画・ドラマってゾンビ物が多く、そしてかなり人気じゃないですか?
これは私の勝手な想像なのですが・・・
ある日LAの墓地を通りかかった時、「そういえばアメリカは土葬が主流なんだよな〜あそこに埋められてるのか、ちょっと怖いな」と思いました。そして閃きました!そうか土葬するからゾンビ映画がこんなに多いのか!
土葬が多い理由
ここにも、キリスト教の思想が関係しています。
イエス・キリストは死後3日で蘇ったと考えられています。そのため特にクリスチャンは、身体がなくなってしまう火葬ではなく、土葬を選ぶそうで、それがずっとアメリカの伝統でした。
しかし、アメリカで埋葬等の統計などを管轄しているNational Funeral Directors Association(NFDA) という組織によると、土葬を選ぶ人は様々な理由で減ってきており、2040年には土葬がかなりの少数派になると予想されています。
2015年 | 2020年(予測) | 2040年(予測) | |
---|---|---|---|
土葬: Burial(%) | 53.3 | 37.5 | 15.7 |
火葬: Cremation(%) | 40.4 | 56.4 | 78.7 |
出典 ・NFDA, Rates of Cremation and Burial ・NFDA, Cremation is Here to Stay: Aging Baby Boomers Proved Catalyst in Shift Beyond Traditional Burial |
ちなみに、日本の火葬率は99.99%です!(出典: 政府統計の総合窓口(e-Stat) 2016年度 衛生行政報告例)
英語に見えるキリスト教要素
"Oh my god!" ・ "Jesus Christ!"
驚いたときの定番!でもクリスチャンは「神様の名前をむやみに言っちゃいけない」と子供の頃から教えられているので、クリスチャンほど使いません。旧約聖書にある「モーセの十戒 (出典:Wikipedia)」に由来する教えです。
ドラマや映画などでもよく使われる表現ですが、クリスチャンの中にはそれを聞いていて違和感を持つ人もいるそう。私もそれを知ってからは "Oh my god!" ではなく、"Oh my!" や "Oh my gosh!" と濁して言うようにしています。
"Jesus Christ!" や "Jesus!" は私はもともと使いません。笑
"Bless you!"
アメリカ(というか英語圏)でくしゃみをしたら "Bless you!" とほんとによく言われます!文字通りの意味だと、「神様の御加護がありますように」的な感じですね。
もちろん人によりますが、くしゃみをすると6〜7割の割合で全然知らない人からも "Bless you!" と言われる気がします。聞こえるか聞こえないかくらいの大きさでぼそっと言ってくれる人もいました笑
New York Timesのあるコラムによると、これは遠い昔、「くしゃみは疫病や天才の前兆だ」とか、「くしゃみをしたときに悪霊が身体に入り込む」と信じられていたため、くしゃみをした人に対して「神様の御加護がありますように」と言うことでそういう悪いことを追い払おうとしていたんだそうです。
子供の頃から教えられていることで、言わないとむしろ失礼なんですね・・・そして日本や韓国意外の諸外国ではくしゃみに対して何かしら言う言葉があるんですね、驚きました。
このコラムは面白かったので、興味があったら読んでみてください。何でくしゃみに "Bless you!" と言われるのかが書かれています。
まとめ
こうしたアメリカの文化背景を知ったうえでアメリカ(や英語圏)の映画を見ると、また違った作品に見えると思います(少なくとも私はそうでした)。
親しい友人のことを "bro" (brother)、"sis" (sister)と呼ぶのも、「人間は皆神の子供だから、みんな兄妹」という聖書の教えのなごりなのかもしれませんね。
奴隷制度や人種差別の歴史はその教えにすごく反している気がするので矛盾しているようにも見えますが・・・。
人種なんて超えて、一人の人間として世界中の人が尊重し合う世界に少しでも早くなりますように。